鹿ケ谷・安楽寺のサツキ。カフェで「京唐子」を見る。

 「哲学の道」から少し東に入ると、山手に沿って、銀閣寺から法然院、霊鑑寺へと連なる道があります。

 少し狭いですが、そんなに歩く人も多くなく、山の緑の合間に、これらの寺の雰囲気ある山門が現れ出る、散策には、もってこいの道となっています。

 今回は、法然院と霊鑑寺の間にある、「安楽寺」を訪ねました。

 5月27日、サツキが見ごろを迎えた春の特別公開ということで、まさに新緑の季節の真っただ中、山門に至る石段を、青紅葉を仰ぎながら上っていきました。

 鶯たちがここを先途とばかり、「ホーホケキョ ケキョケキョケキョ」に終わらず、長い節回しをリピートし、競い合いながら合唱しているようで、これが自然のBGMになっていましたね。

 安楽寺は、サクラ、ツツジ、サツキ、モミジの時期の土日中心に公開されており、これらがメインではありますが、法然院、霊鑑寺の並びに位置するだけに、椿もちゃんと楽しめるところがありました。

1 緑眩しい安楽寺

 この道を歩くと、このような風情ある山門に出くわします。京都のまち歩きは、このようなちょっとしたサプライズが楽しいです。

 山門をくぐると、サツキ咲く庭園が見えてきました。

 一番大きくて、花盛りだった、サツキです。

2 安楽寺の由来

 本堂に入り、住職から、この寺の由来についてのお話をしていただきました。

 鎌倉時代の初めころ、この地の近くに、法然上人の弟子の住蓮上人と安楽上人が「鹿ケ谷草庵」を結んだことが始まりです。

 浄土に往生するため、ひたすらに念仏を唱える「専修念仏」の教えが庶民に広がる中、後鳥羽上皇に仕える女官であった「松虫姫」と「鈴虫姫」は、法然上人の説法に感銘を受け、上皇が熊野詣で御所を留守にしている間に、意を決して、草庵に赴き、そのたっての願いにより、住蓮上人と安楽上人の前で出家するという出来事がありました。

 帰京してこれを知った上皇は、教団に対し、きわめて厳しく処断し、住蓮上人と安楽上人は、斬首!、法然親鸞流罪となります。

 背景には、「専修念仏」の広がりに危機感を覚えていた比叡山や既存教団の圧力もあったとされ、この事件は、「承元の法難」として有名です。

3 書院からのサツキの眺め

 縁側に座って、ただ、庭を眺めるのも、贅沢な時間の過ごし方です。この風景を独占しているようです。

4 お寺の心地よいカフェスペース

 境内の一角に、2010年、客殿が建てられ、1階は、カフェスペースとなっています。

 飛騨高山の大工さんが腕を振るったということで、太い柱と梁が重厚感あり、無垢の床板に民芸調の椅子やテーブルが置かれ、実に心地良い空間となっています。

 雰囲気に魅かれて、ちょっと、ここで休憩することにしました。

 「椛」は、もみじと読むのですね。

 午前早めの、まだ混まない時間帯だったこともあり、この「特等席」に座ることができました。

5 安楽寺の椿たち

 私たち夫婦の座った席の窓の真正面に見えるのは、形の良い椿。本当に絵になるし、主役が椿というのがうれしいですね。

 品種は「京唐子」で、これは、私の好きな椿です。開花時期に、この席から見てみたいものです。サクラの時期と重なりますし、多くの人が訪れるので、今回のようにゆっくりとシーンを独り占めということは難しいかもしれませんね。

 ちなみに、今年の府立植物園で見た「京唐子」です。優しく上品な花です。園芸店で見かけたことはなく、私も欲しいと思いつつ、入手できていない品種です。

 山門を入ったところにある椿です。

 藪椿も、山手側に多くありました。住職にお聞きすると、実生のものが自然に成長しているそうです。

 サザンカ(富士の峰)です。

6 雑感的蛇足

 椿はシーズンオフでしたが、存在感を示していました。客殿前の「京唐子」は、寺で見る椿とは少し異なった趣向での視点を楽しむことができました。

 それにしても、後鳥羽上皇の苛烈な処断は、ちょっと違和感を覚えましたね。何か表立っては言いづらい事情もあるなど、いろいろと重なってしまったゆえのことだったのかもしれません。