亀岡「苗秀寺」の椿

1 苗秀寺の対の大椿

 亀岡から丹波篠山へと通じる国道372号線、通称「篠山街道」。

 亀岡市街を抜けて、山あいへと進むと、京の奥座敷といわれる「湯の花温泉郷」へと至りますが、その手前の山すそに古くから開け、街道の宿もあった「稗田野地域」に苗秀寺はあります。

 このお寺は、紅葉の美しい穴場的スポットです。

 もともとは、奈良時代丹波国分尼寺の流れをくみ、寺勢盛んであったと伝わりますが、明智光秀丹波攻めの際に、記録も一切失われてしまったようです。

 亀山藩の山城跡であった現在地に、藩主松平 信岑(1696~1763)が再興したとされ、およそ300年が経っています。

 寺には3つの門がありますが、最初の2つの門は、どっしりとした石の門で、とりわけ2番目の門は「白象門」と名付けられ、佐賀県産の63トンもある花崗岩といいますから、なかなかの迫力があります。

 出家の覚悟を決めてこの門をくぐるべしという、決意の重みを表すそうです。

 「白象門」にはためく旗には、不思議な「世界観」が感じられますが、その左手「薬医門」への、モミジの並ぶ苔むす参道は、山寺の風雅な雰囲気も感じられ、秋の紅葉が映える場所として人気があるというのもよくわかります。


 この「薬医門」をくぐると、法殿前の両脇に、提灯型に見事に仕立てられた椿が対になって植えられています。

 

 枝張りは、どちらも直径5mほどもありそうな大椿です。

 庭木によくある刈り込み方ですが、こんなに大きなものは、これまでの寺社巡りでは見かけなかったですね。

(赤椿)

 

 樹の地面近くを覗き込んでみると、差し渡し30cm以上のがっしりとした幹が立ち上がっています。

(白椿)  

 訪れたのは、3月の上旬と、4月下旬のGWでしたが、3月はまだ花が咲いておらず、GWはほぼ咲き終わりの状態でした。

 右手側の白椿の方は、まだ花がいくらか咲いていましたが、赤椿は、わずかに一輪、二輪の最後の花を残すのみ。それでも、どんな花かを知ることができてよかったかな。

 赤椿の方は、樹下の落椿の様子からは、おそらく開花時には、華やかな紅い模様の毬のような姿を楽しめたことでしょう。

 4月上旬くらいが見ごろと思われますので、また、来年、再訪したいと思います。

 南北朝時代のものと伝わる宝篋印塔です。

2 中庭の五色椿

 お寺の裏手に廻り、中庭をふと見ると、赤と白と絞りの大輪の椿の花が目に入りました。

 株太刀の大枝がくねるように高く伸びた立派な椿の木に、美しい花が咲き分けています。

 幹の太さからして、優に100年以上になりそうなものでしたね。

 濃い灰緑と灰白の斑を持つ独特の木肌です。

 裏庭の静かな空間に、人知れずそっと咲く姿に、金蔵寺の椿を思い起こしました。 

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 この椿は、3月に訪れた時にすでに咲いており、GWには花はなく、若葉に移行していましたので、早咲きの系統と思われます。

3 新緑の苗秀寺

 4月下旬の参道は、すでに一面の青紅葉。

 爽やかな緑陰の中、遅咲きの桜とツツジも見ることができ、新緑の季節を満喫することができました。

 亀岡の名木に選定された、アラカシとモミ