洛西「浄住寺」の黒椿

 阪急嵐山線・上桂駅から西へ西へと進み、山裾にまで行くと、苔寺西芳寺鈴虫寺、地蔵院、そして今回紹介する浄住寺などが集積するエリアに出てきます。

 銘椿のある、竹の寺・地蔵院から南に歩いて数分のところに、浄住寺はありますが、この寺にも椿の見どころが多いことはあまり知られていないと思います。

 苔寺鈴虫寺を訪れる人も、ここまでは足をのばす人は少ないのですが、自然味豊かな境内は、紅葉時以外でも楽しむことができ、リフレッシュできるおすすめの場所です。

 そんな浄住寺を、椿を中心にご紹介します。

1 浄住寺の沿革

 開創は、古く810年と伝えられ、鎌倉末期の戦乱、応仁の乱、その後の火災による荒廃から、何度も再興され、今に至っています。中興後、鎌倉期には、「太平記」に「異端奇特の大伽藍」と記されるほどの寺容を誇ったとされています。

西暦 開基・中興・再興 開山 備考
 810年 嵯峨天皇の勅願 円仁(慈覚大師) 天台宗
1261年 葉室定嗣による中興 叡尊 葉室家の菩提寺
1687年 葉室頼孝による再興 鉄牛道機 黄檗宗

 浄住寺に関わる葉室家は、藤原北家を流れとし、白河法皇院政時、重要な政務にあずかり、「夜の関白」と世に称された藤原顕隆を祖とし、この地に荘園を有し、山荘を構えたとされます。

 この山荘を、叡尊に帰依した葉室定嗣の願いにより、寺にしたとされ、浄住寺前には、今も、「山田葉室町」という地名が残っています。

 黄檗宗の寺は、京都市内には、14寺あるようで、そのうちの一つということになります。

2 浄住寺への道しるべ

 大変狭い道幅であり、生活道路でもありますので、車で行くことはおすすめできません。上桂駅からハイキング感覚で歩いて、だいたい15分程度で行けるところです。

(googlemap活用)

 西山、松尾の山並みまで、市街地が拡がり、寺周辺も静かな住宅街となっています。境内に一歩入ると、石段のある参道が山へと続き、深い木立が包む、街中とは思えない世界が広がっています。浄住寺は、近年、紅葉の隠れた名所として有名になっていますが、新緑の青モミジも、目に眩しく、清浄な雰囲気に心も洗われます。

3 浄住寺参道の椿たち

 入口すぐ左手に、大木ではありませんが、目に留まる椿があります。

 藪椿ではなく、園芸種のようだったので、開花時に訪れると、「五色八重散椿」でした。4月に入り、時期が遅かったのか、花のつきはあまりよくありませんでしたが、この椿の特徴らしく、咲き分けをみせていました。

 そこまで太くはありませんが、味わいあるかたちの幹となっており、年月を感じさせます。

 土塀内へと進みます。結界のようですね。

 上の写真は3月の頃。4月16日、すっかり青紅葉と化していました。

 3月の雨けぶる、本堂へと向かう石段。藪椿の落ち椿がよく似合います。

 2週間くらいで、緑一色となりました。まだ、藪椿は咲いていましたが、一面の緑に紛れてしまいました。

 本殿正面です。

4 美しい黒椿

 本殿を右に、庫裏の方向に、黒椿が咲いています。

 寺の方にうかがうと、先代の住職の奥様が椿好きで、多くの椿を境内に植えられたそうですが、この黒椿もその一つだとのこと。

 黒椿は、樹勢が弱く、成長が遅いため、50年くらいで、ようやくこの大きさになるのでしょう。

 この黒椿は、地元でも知られ、訪れる人も多いらしいですが、年によって、花の咲きが大きく違うとのこと。昨年は、ほとんど花がなかったということですが、今年は、蕾も多く、綺麗に咲くのではないかと仰っていましたが、何とか、咲いている姿を見ることができました。

 肉厚で、光沢のある、黒味を帯びた色合いは、黒椿独特のものです。

 

 庫裏の右手にも、多くの椿があります。少し白斑が入る美しい椿です。

 濃い桃色で、乙女椿に似た椿です。

 4月16日、残る花は、少し紫色を帯び、桃色の柔らかさだけでなく、神秘的な感じさえ漂わせていました。

 山手に上がったところに、今が満開の椿を見つけました。

5 浄住寺の庭。朝掘りの筍をいただく。

 本堂、方丈回りに、6つの庭が配置されていますが、紅葉シーズン時などに特別拝観により公開されます。

 整えられた庭園もよいですが、参道沿いに茂る樹々も魅力があります。

 庫裏の横に、お寺の竹藪の筍でしょうか、採ったばかりの筍が新聞紙の上に盛られていました。

 朝堀りの新鮮さに魅かれ、お気持ちの志を木箱に入れて、小ぶりなものをいただくことにしました。

 この黒板の案内は、字も、イラストも、実にセンスがありますね。

 若竹煮にしていただきました。あくもなく、歯ざわり抜群、おいしかったです。