大豊神社は,東山連峰の一つである椿ヶ峰を御神体とした山霊崇拝の社を起源として、宇多天皇の病気平癒のため、医薬の神でもある「少彦名命」を奉じて創建されたと伝えられる古社です。
菅原道真が合祀されているのは、道真を深く信任した宇多天皇との関係によるものなのですね。後一条天皇の寛仁年中( 1017~1021年)に山麓の現在地に移り、大豊神社と名前を変え、鹿ヶ谷一円の産土神となり、今に至っています。
哲学の道界隈のロケーションの良さと、狛犬ならぬ狛ねずみが人気の観光スポットでもあります。
また、椿ヶ峰の名のとおり、椿が多く自生している山の神を祀っていたこともあるからか、大豊神社は、椿の名所としても有名です。
桜の咲き始めた神社の椿をご紹介します。
1 桜を観ながら、参道を歩く
「哲学の道」から大豊神社へ。満開の桜が迎えてくれます。
参道にも、多くの椿が植えられています。左右に、椿の花を観ながら歩きながら、鳥居へと進みます。
「椿ヶ峰」が、社殿後ろに切り立つようにそびえ、迫ってくるような感じですね。
緑の山を背景に、椿と、桜と、梅と、春を代表する花々がちょうど咲きそろっている時期に訪れることができました。
2 樹齢400年の大椿、珍しい園芸種
鳥居を入ってすぐ、右手に、椿の古木があります。
案内板には、樹齢400年とあり、綺麗な樹肌で、主幹が3本、高く伸びた枝に、紅い花を咲かせていました。
「紅色地白斑」という表示ですが、見上げる範囲では、ほぼ紅色で、白斑がはっきりと入っているものは見つけられませんでした。
境内一の椿の巨樹であり、椿の大豊神社のシンボルツリーですね。
400年の間に、幾多の人が、この椿を見上げ、慈しんできたことでしょうか。年老いた椿を観ると、いつも、そのようなことを思います。
令和6年4月撮影。今年の花には、白斑を見ることができました。
3 珍しい椿が勢ぞろい
珍しい品種の椿も多く見られます。大樹に育っているのもあり、椿の神社としての歴史の古さを感じます。
「鈴姫」 伊予椿ですね。柔らかい桃色の花が、枝垂れるように咲いていました。
「東雲」です。ほんのり鴇色に染まる、大変清楚な花です。花弁が薄く、透き通るようで天女の衣装のような高貴さも感じます。筒蕊も綺麗ですね。
白い椿と赤い鳥居。品種は「瑞光」です。
本殿の裏手の方に静かに立つ古大樹です。地味といえば地味な花ですが、ひっそりとつつましげに咲く様も、心に響く人も多いと思いますし、それが椿の多様さでしょう。
「無憂」です。 あまり、聞かない品種ですが、鈴姫や東雲と似た系統ですね。それにしても、大木に育っているのが多く、最近の品種ではないのでしょう。
神社定番の「五色八重散椿」です。日吉社の狛猿の傍にあります。
椿「蝦夷錦」をメインに、桜を背景に。
鳥居そばに咲き誇る「神代椿」。
「輝国の春」
「太平の里」
「暁」。酒中花にも似る美しい椿です。
「絵馬堂」の南方向、大杉の御神木との間に、紅白の大椿が並んで咲いています。
白い落椿、紅い落椿。
4 椿を纏った「狛ねずみ」
有名な大国社の「狛ねずみ」。椿の髪飾りをまとっています。
「狛巳」「狛鳶」「狛猿」も椿の飾りをあしらわれていました。
似合っているかといわれると、「狛猿」がまあ、なるほどという感じで、「狛巳」が少し違和感があって微妙というところでしたね。
椿の名所「大豊神社」をようやく訪れることができました。
珍しい品種が多く、また、大木が多いことが、この神社の椿の特徴だと思います。
華麗な椿もありますが、私としては、上品、可憐な椿に魅かれますね。
銀閣寺から、法然院、霊鑑寺、そして大豊神社と、哲学の道をたどりながらの、「椿」ツアーは、見応え十分。
椿ファンには、とても一日では回り切れないくらいのボリュームかもしれません。
桜満開のこの時期、幸せな時間を満喫できること請け合いです。
大豊神社の地図(googlemap活用)
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