- 1 雨上がり、紅葉終盤の隨心院を訪れる
- 2 小野小町ゆかりのお寺
- 3 「奥書院」から見る庭園に椿もありました
- 4 本尊「如意輪観世音菩薩坐像」の特別開帳に間に合いました
- 5 塔頭「大乗院」の大椿に感動する
1 雨上がり、紅葉終盤の隨心院を訪れる
隨心院は、車で行くなら、京都東ICから、府道35号線(大津淀線)を南下して約10分、公共交通機関利用なら、 地下鉄東西線「小野」駅の西方に徒歩約5分、500メートルほどに位置する、山科・醍醐の名刹であり、小野小町ゆかりの寺院としても有名です。
寛喜元年(1229年)、後堀河天皇による門跡の宣旨以来、隨心院門跡、小野門跡と称されています。
11月末日、前夜の大雨から一夜明け、やや足元の悪い中でしたが、少し足を伸ばして、参詣してまいりました。
雨で紅葉もだいぶ落ちているだろうし、平日ということもあり、静かにゆっくりと拝観できるだろうという予測通り、よい時間を過ごすことができました。
サザンカ垣が、開花し始めています。紅葉は見ごろは過ぎましたが。
2 小野小町ゆかりのお寺
「花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに」— 『古今集』
小倉百人一首でも、ポピュラー度はぐんと上位に来るだろう定番の一首です。
このあたり一帯の地域「小野」は、古く小野氏の栄えたところであり、小野一族は、小野篁、小野道風、小野好古などを輩出しています。小野小町は小野道風の従妹とされていますが、さて。
小野小町ゆかりの地として、「小町文塚」、「小町堂」、「化粧の井戸」、「小野小町文張地蔵尊」、「卒塔婆小町坐像」などなど、見どころは豊富です。
雨の翌日なので、井戸の水が濁っていますが、普段は透明のようです。
3 「奥書院」から見る庭園に椿もありました
拝観受付のある「庫裏」です。宝暦3年(1753年)に、二条家より移築。
ここに拝観受付があり、順路に沿って、進みます。
「奥書院」からの庭園の景色です。塀の外側にも、背景に社叢林が広がっており、庭園と一体となって、高さと奥行きのボリューム感を出しています。
美しいもみじと石塔の間に、2本の椿が植えられています。また、写真には写っていませんが、庭園の右手、工事中の本堂そばには、相当な大きさのサザンカと思われる樹があり、桃色の花を咲かせていました。
多種多様な樹木・草木が植樹されており、四季折々に楽しめることと思います。庭に下りることはできませんが、ゆっくりと散策できたら最高でしょうね。
「小町堂」です。紅葉がだいぶ落ちていますが、それもよい雰囲気を出しています。
「奥書院」の横手側の庭にも、しっかりと椿がありました。門跡寺院には、ほぼ、椿がありますね。あまり目立たないけれど、ところどころ、静かながらも、しっかりと居場所を占めているという感じです。どんな花を咲かせるのか、この雰囲気にどうフィットするのか、また、再訪したいと思っています。
4 本尊「如意輪観世音菩薩坐像」の特別開帳に間に合いました
隨心院の本尊は、「如意輪観世音菩薩坐像」です。
【法 量】像高(髻頂より)96.3㎝
真言宗小野流の中心寺院である随心院の本尊像。檜材の寄木造、漆箔仕上で玉眼を嵌入する。目尻が吊上がり口許を引締めて意志的な表情を浮かべる面貌、のびやかな手足を均衡よく配した全体観、適度に整斉された衣文などに運慶次世代の作風をよく示す。快慶作金剛薩埵像(重要文化財)とともに建保5年(1217)に始まる親厳による同寺修造における造像とみられる。
京都の名刹の本尊として伝わる慶派彫刻の優品であり、当初の表面仕上の過半をとどめる保存良好さも賞される。~令和2年3月19日文化審議会答申資料より~
漆箔の剥離、部材のゆるみや腐食、虫食いなど痛みが相当進んでいたため、令和3年4月から1年をかけて、京都国立博物館で修理を行ったとのこと。修復担当者によると「20年以上の仕事の中で5指に入る難しさだった」ということですが、見事に修復され、当初の姿を見せてくれています。
現在、本堂が工事中のため、表書院に、この如意輪観世音菩薩坐像と、快慶作の金剛薩埵坐像の2体の重要文化財が安置されていました。両体とも、細身で均整が取れ、凛と引き締まったお姿で、写実的リアル感がありながらも、優美、荘厳さも併せ持つ魅力は格別のものです。「慶派」の好きな方には、必見のものだと思います。
隨心院の伽藍は、承久・応仁の乱で、灰燼と化しましたが、これらの仏像は、戦乱、混乱から免れ、800年にわたり大切に守られてきたということですね。
寺宝の下調べをしていなかったのですが、この仏像を見ることができたのは、うれしいサプライズでした。如意輪観世音菩薩坐像の今回の御開帳は、11月30日までだったので、まさに、ラストの日に訪れたことになります。
5 塔頭「大乗院」の大椿に感動する
椿好きの私にとってのサプライズは、隣接する塔頭「大乗院」に大椿を見ることができたことです。
隨心院駐車場から拝観入口に向かう道筋にありますが、よく手入れされ、大きな円筒状に刈りこまれた姿が大変きれいです。
これだけの大きさで、こんもりとした樹形におさまるということは、樹に勢いがあり、葉量も豊富だということがわかります。
間近で見ると、堂々とした幹と、八方にくねりながら広がる枝が圧巻です。幹周は1メートル近くあるのではないでしょうか。
2輪だけ咲いていましたが、身厚の藪椿のようでした。蕾もたくさん付いているので、満開時期には、紅に彩られて、壮観だと思います。
参拝客も少なく、ゆっくりとお参りすることができました。やや、市内から距離があるからかもしれませんが、混雑がなく、自分のペースで自由に拝観できる、見るべきものには事欠かない、お勧めの寺院だとあらためて思いました。