白石神社、若狭彦神社、若狭姫神社の椿~若狭小浜の探椿記その②

鵜の瀬・白石神社の大椿

若狭の古刹「明通寺」と「羽賀寺」~若狭小浜の探椿記① - 京で椿を楽しむセカンドライフ(続編)

 鯖街道の一つ「針畑越え」は、小浜から遠敷川の谷筋に沿って南へ進んで、針畑峠を越え、花脊から鞍馬街道を通って京へと至る最も近い道として利用されてきました。

 近いといっても18里70キロ超の道のりです。朝に浜にあがった鯖に一塩して、一昼夜かけて都に届けたといいますから、健脚というか、苦行のような路程ですよね。

 「針畑越え」は、国府国分寺などが置かれた若狭の中心地・遠敷(おにゅう。難読です。)の幹線であり、道筋には由緒ある社寺が集積しています。

 若狭小浜の椿探索のパート2は、若狭一の宮として1300年にわたって敬われている若狭彦神社・若狭姫神社を中心に、「神様」関係の名所と椿をご紹介します。

 

1 鵜の瀬「白石神社」の椿群

 奈良の春の訪れを告げる「お水取り」では、東大寺二月堂前の若狭井から「お香水」を汲み上げますが、この水は、遠敷川の上流にある「鵜の瀬」から「お水送り」をして、10日間かけて若狭井まで届くものとされています。

良弁の生誕の地との伝承。東大寺の修二会と若狭明神との逸話が「お水取り」の行事につながっています。

 この鵜の瀬の白石に、若狭彦神と若狭姫神が降臨されたと伝えられ、和銅7年(714年)に若狭彦神社が創建されましたが、ここは仮住まいで、翌霊亀元年(715)には、現在地に遷られ、さらに、若狭姫神社は、養老5年(721)に分祀されました。

 鵜の瀬の創建の地には、白石神社という社が残っています。

 鳥居の奥、ほの暗い林の中に、小屋掛けの小さな祠がありました。

 この林の主役は、群生する大きな椿で、小浜市の天然記念物に指定されています。

 祠に向かって左奥には、とりわけ大きな、幹回り180センチと130センチという椿が、苔をまとって、高く空に伸びていました。幹回り50センチを超えそうなものも沢山ありましたが、この大椿を見てしまうと、それでも、まだ若輩という感じでしたね。

 この光景には、既視感があります。京都大原・花尻の森と雰囲気と大変よく似ています。

「花尻の森」の椿群 - 京で椿を楽しむセカンドライフ

 かつては、社の裏山まで椿の自然林が広がっていたそうですが、今は、その一部が残っているようです。

 これだけの椿がそろうと壮観です。落ち椿の頃は、本当にきれいだろうと思いました。

 見事な群生を見ることができてよかったと白石神社を後にしたのですが、肝心なご神木の椿を見逃してしまったようです。

 実は、祠の右手奥に、しめ縄を張られた、幹回り250センチを超える「千年椿」と呼ばれるご神木があったようです。あまりに大木すぎて、かえって椿とは気づかなかったのかな。シンボルの椿を見逃すとは、返す返すも残念なことをしました。

2 厳かな若狭彦神社の椿参道

 白石神社から、2.7キロほど県道35号線を下ると、若狭彦神社(上社)です。

 大きな杉が並び立つ参道に入ると、椿の大木が幾つもあるのに驚きました。

 杉が立派で巨大なために、相対的に、椿が大した太さでないように見えてしまいますが、「単品」で見たら、メインツリーとして通用しそうなものを何本も見かけました。

 特に、大杉と根元で一体化している大椿は、何か名付けをしてもよいようなプレミア感がありましたね。

 神社としての中心は、いつのころからか下社の「若狭姫神社」に移っており、参詣も少なく、ひっそりとしていますが、巨杉の参道と古式ゆかしい本殿のたたずまいには、千年の歴史の重さと厳かな霊気を強く感じましたね。

 パワー・スポットとされているのもよくわかります。

 3月に参詣する人は、参道から見上げると満開の椿花、見下ろすと地面を紅く染める落椿を楽しめることでしょう。

3 若狭姫神社のご神木「千年杉」

 若狭彦神社から、さらに1.6キロほど市内へ進むと若狭姫神社があります。

 安産育児、縁結びにご利益がある神様で、参詣の方も多かったですね。

 この社の見どころは、千年杉。神門の左に、巨大な幹が空高くそびえたつ姿に圧倒されます。雄大で、パワーあふれる見事なご神木です。

 千年杉のほかにも、乳神様とよばれる大銀杏などの巨木が立ち並んでいます。

これもかなり大きな椿でした。

4 エンゼルライン「久須夜ヶ岳」からのパノラマ

 ここまで回って、そろそろお昼時。海辺の方で、食事休憩しようとしたのですが、予想通り、有名店はどこも列をなしている混雑ぶり。若狭フィッシャーマンズワーフの広い駐車場も空き場所を探すのに一苦労。やはり、この時間帯は観光客が集中するのですね。

 なんとか、腹ごしらえもできて、エンゼルラインへと出発。

 山の頂上の展望台へと、ヘアピンカーブを曲がって高度が上がるにつれて、見下ろす小浜湾の眺望がだんだんと広域となっていきます。

 途中、実に立派な大岩を目にして、車を停めました。古く「大神岩」と名付けられ、地元の神様として崇められてきたものです。ここからの景色も素晴らしかったですね。

 頂上につくと、360度の見事なパノラマを楽しめます。天気はよかったのですが、空気がややもやっていて、遠望はクリアにはならず。それでも、小浜湾、丹後半島日本海、常神半島をぐるりと一望できました。さすがに有名な眺望スポットです。夕日のシーンは最高でしょうね。

 日帰りの駆け足での旅となってしまいましたが、小浜には、高速道路が通り、行きやすくなりました。

 萬徳寺の五色椿、神宮寺、多田寺など、まだまだ小浜には行きたいところが沢山あります。近い機会に再訪したいと思います。