京都・高尾には、神護寺、高山寺、西明寺の、「三尾」と称される古刹があります。
このうち「西明寺」は、紅葉の景色の素晴らしさが知れ渡ってきてはいますが、三寺の中では、まだ知名度が高くなく、ハイシーズン以外は、山懐の静けさの中の閑寂な風情が趣深いお寺です。
「西明寺」には、駐車場がありませんので、市営高雄観光駐車場に車を停めて、10分あまり歩いて向かいましょう。
国道162号線から、神護寺、西明寺方面の標識にしたがって、道を折れて下っていくと、清滝川のせせらぎが聞こえ、清流が見えてきます。


4月も下旬になると、モミジの若葉が一斉に伸び、視界は一面、瑞々しい緑に包まれます。
清滝川に架かる朱塗りの橋が「指月橋」。紅葉時の絶景スポットとして、誰もが写真に収めるところですが、この季節、紅い橋が新緑に鮮やかに浮かぶシーンもおすすめですね。

橋を渡り、対岸のジグザグの参道を上っていくと、大杉と古い石灯篭が並ぶ表門が見えてきます。

境内に入ると、正面には本堂、その左手には渡り廊下でつながっている客殿が建っています。両堂の前に立っているのが、樹齢700年といわれる高野槙。寺号の「槙尾山」、地名の槙尾町の由来になっている古木です。






本堂には後でお参りすることとして、境内を一回りすると、庫裏の横に、池を巡る苔庭があり、高い木の先に椿の花が咲いているのが見えました。
年数を経ているような木の根元を見ると、山裾の湿気を含んで、分厚く広がる苔の上に、落ち椿一輪。この唐子咲は、お寺の定番の「日光椿」ですね。




後日、再訪した時には、ずいぶん低くに枝が切り戻されていました。樹勢がやや弱ってきていたのでしょうか。
庭の山側の塀越しには、桃色の椿の高垣がありました。



ところで、西明寺の春の景色といえば、裏山のミツバツツジです。
桜と同じ時期に開花するので、ツツジの群落の紫に、ところどころに桜色が浮かぶ、高貴な装いで山腹を彩る美しいスポットです。
桜には遅れてしまったのですが、紫はまだ残っていて、桜の代わりに新緑との取り合わせを楽しみました。この光景は、寺の対面、清滝川の対岸の道路からの方が見やすかったですね。




最後に、本堂にお参りしてきました。受付は外にはなくて、本堂内にありました。
このお寺の雰囲気として、あまり観光然となるのをよしとされていない感がします。
もともと、修行の場であったことの歴史を重んじておられるのかもしれません。
厨子に安置されている小ぶりな本尊釈迦如来像は運慶の作。脇陣の千手観世音菩薩像は平安時代の古仏。素朴ながら均整の取れた美しい仏さまでした。どちらも重要文化財指定をされています。
本堂の右手、開け放していただいた戸の向こうには、苔むした宝篋印塔を中心に、緑の濃さが印象的な庭が広がっていました。



