大原野の椿を巡る~大原野神社、正法寺、願徳寺

1 東の大原、西の大原野

 大原野は、京都市西京区の西、西山山麓に広がる地域です。
 延暦3年(784)年に桓武天皇により、平城京から長岡京に遷都されて以来、都にほど近い遊猟地として、平安時代天皇家藤原氏が度々訪れた足跡の残る由緒ある地です。
 また、古墳もいくつも発掘されており、古代から拓かれていた場所でもあります。
 よく「大原」と間違えられることもある「大原野」ですが、田園風景が開ける山麓の平野部と、山間部の歴史ある集落、大原野神社勝持寺など静かな佇まいを見せる魅力ある観光スポットも多い、穴場的な地域です。
 あまり、観光客もおらず、都会に近い「田舎」を、のんびりとリフレッシュできる格好の場所だと思います。
 私のホームエリアでもあるので、何度となく、足を運んでいますが、あらためて、大原野の四季と、「椿」を巡って歩いてみます。
9月10日撮影。早稲の刈入が進んでいます。

「京都縦貫道」の向こうに広がる西山。ところどころに桜が見えます。

2 大原野神社の椿と「千眼桜」

 まずは、大原野の名を冠する「大原野神社」。長岡京遷都に当たり、桓武天皇の 皇后であった藤原乙牟漏(ふじわらのおとむろ) が奈良春日社への参詣の不便を解消するために、奈良の春日大社の分霊を大原野に移し祀ったのが始まりとされています。

 ここの参道は、秋の紅葉が有名ですが、春には、「千眼桜」と呼ばれる枝垂桜、そして、境内には、椿も多く見られます。本殿前の孔雀椿、日光椿をはじめ、園芸種も植栽されており、参詣者の目を楽しませてくれます。

 狛鹿の前、向かって右手が孔雀椿、左手が日光椿です。

 「孔雀椿」

 「日光椿」

 

 「千眼桜」とは、満開の一重の花が,たくさんの目があるように見えることから名付けられたと伝えられています。満開の期間が3日ほどと短く、運よくこの時に出会えば、千の願いが叶うという有難い桜です。

 令和6年4月7日撮影。今年は、桜の開花が遅れましたね。

 参道右手にある「鯉沢池」。7月には、蓮の花が見られます。小ぶりな白いお花です。

3 知られざる?藪椿の巨樹 

 大原野神社を出て西へ、勝持寺へと向かう参道は、仁王門をくぐると、林の中を抜ける登り道で、両側に高く伸びる竹や木々が鬱蒼と茂り、人里離れた雰囲気を醸し出します。誰も歩く人がいないと、寂し過ぎて、ちょっと怖い感もありますが。
 勝持寺の仁王門に至るまでの、道筋に、藪椿の巨樹があります。
 昔から「立派な樹だなあ」と思っていましたが、あらためて、よく見てみますと・・・。
 幹周は、1メートルを優に超え、太い幹がうねりながら上空に伸びている様子は、他の有名な椿の巨樹と同じような風格を備えています。
 枝が岐れている部分に亀裂が入っており、やや樹勢の衰えが気になるところです。紅い椿だったと記憶していますが、開花時には、また、ご紹介します。
(追記)令和5年2月5日、再探訪です。
 他の藪椿よりも少し早咲きのようで、すでに赤い花を、全木に咲かせていました。
 蕾も多く残っており、3月初旬くらいが最も見ごろになるかもしれません。
 巨樹と対照的に、とても小柄で可愛らしい花で、人知れず咲く山里の椿という風情に合う気がしました。

 この樹が、大原野神社の境内など、然るべき場所にあれば、取り上げられることもあったと思いますが、藪の中に普通にあるので、見過ごされてきたのかも。もしかすると、土地の方には、知られた椿なのかもしれませんが。
 このあたり椿の群落となっており、中には大ぶりな花も見かけます。

4 正法寺「石の寺」の椿

 大原野神社の南側には、正法寺、通称「石の寺」があります。 名の如く、巨岩、奇岩が数多く配置されていますが、幾つかある庭園も美しく、「宝生苑」という名の、借景式山水庭園は、遠く東山を臨み、お堂の縁側から、ゆったりと眺めることができます。

 この寺では、庭園をはじめ、椿が数多く植えられています。庭園樹として、手入れがされており、園芸種と思われますが、相当の樹齢らしきものもあります。

 開花にあわせて、品種などを紹介していきたいと思っています。
(追記 2023.4)

 「関西黒龍

(追記 2023.2) 勝持寺の近くに、国宝・如意輪観世音菩薩の優美な半跏像が有名な「願徳寺」があります。私も2回拝観しましたが、1メートルにも満たないながら、実に均整の取れた、引き締まった体つきと凛々しいお顔立ちであり、かつ、流れるようなお着物とポーズのかっこよさで、さすが、国宝となっているのも頷ける仏様です。

 お寺の入口付近にも、椿の一団があります。藪椿にしても、かなり、花弁の大きな品種です。

 

 黒みを帯びた、筒咲のような椿です。