鎌倉の椿巡り④~早朝の妙本寺

 

1 早朝の妙本寺

 鎌倉での宿は、若宮大路に面したところでしたので、ほど近い「妙本寺」へ早朝の散歩に行ってきました。

 若宮大路から「大巧寺」を通り、小町大路に出て、夷堂のある「本覚寺」の道向かいに、「妙本寺」への長い参道が続きます。 

 総門をくぐり、まっすぐな参道を、両側に広がる木立を分け入るように歩いていくと、別世界に入ったような気持になります。


 石段を上ると、薄闇の中に「二天門」が姿を現します。

 門を護る持国天多聞天が、常夜灯に照らされ、浮かび上がっています。

 彫像の陰影がほどよく、感性に訴えますね。煌々としたライトアップであれば、こうはならないでしょう。

 昔の燈明であれば、影のゆらぎも加わり、なおのこと効果があったものと思います。

 「二天門」から広い境内に入ると、正面に、日蓮上人を祀る「祖師堂」が威容を誇っています。

 「妙本寺」が存する比企谷は、比企氏の本拠があったところです。

 当主の比企能員は、頼朝の乳母を母に持ち、娘の若狭局は頼家との間に長子の一幡を産むなど、その勢力が強大になりつつありました。覇権を争う、北条時政と政子の謀略により、比企能員は討たれ、一族はこの地で攻め滅ぼされます。かろうじて逃れ出た若狭局も一幡も、日を置かずして、命を奪われることとなります。

 「祖師堂」の右手側には、比企一族を弔う石塔、また、一幡の形見となった小袖を埋めて供養した塔が静かに立っています。

 800年以上も前のことですが、そんな悲劇の地に足を停めれば、やはり粛然とした気持ちとなりました。

 小雨模様でしたが、次第に明るくなってきました。

 書院前の庭には、唐子咲の椿。

 参道脇には、早咲きの藪椿。

2 「常栄寺」(ぼたもち寺)

 総門前を左に折れて、小径を進むと、「常栄寺」という小さなお寺が道沿いに見えてきます。このお寺は、通称「ぼたもち寺」といいます。

 この地に住んでいた尼さんが、龍ノ口刑場へ護送されていく日蓮上人に「胡麻入りのぼたもち」を捧げましたが、御存じの通り、日蓮上人は奇跡を起こされ戻ってこられたことから、厄除けの「首つなぎぼたもち」として名物として今に伝わっているということです。「腹切りやぐら」だの「首つなぎぼたもち」だの、直截でリアルな命名は少しギクッとはしますが。

 門前の藪椿。紅い門と合います。

3 「大巧寺」の椿道

 再び、小町大路へと戻り、「大巧寺」にお参りしました。

 細長い境内に、所狭しと椿が植えられています。

 春には、多くの品種が咲きそろい、見ごたえあるだろうと思います。

 「妙蓮寺」です。

 椿ロードです。

 鎌倉駅からごく近くで、若宮大路に面しているので、まさに鎌倉の中心部にあります。

 少し歩くと、様々なお寺や神社、旧跡に出会います。思わず時間を忘れて遠出してしまいますね。