京都府八幡市の石清水八幡宮が鎮座する男山。その北の麓にあるのが今回紹介する「常昌院」です。
石清水八幡宮の創設とあわせて建造された神宮寺である神應寺の子院として、元禄時代に創建されたと伝わる曹洞宗の寺院です。
「常昌院」には、樹齢400年という「日光椿」の古木があります。
八幡市の市花は椿ですが、まさに八幡の椿を代表する木として知られています。
「常昌院」へは、京阪・石清水八幡宮駅から、参道ケーブルの下をくぐって、京阪本線の線路の南に沿って西の方向へと、男山の麓沿いの狭い道を進みます。500mばかり歩くと、右手、踏切の手前に山門が見えてきます。
ちなみに、この道は、車では無理なのでご注意を。
私は、線路の北側、三川合流地帯の堤防との間を集落内の道路をつたって、踏切を渡って到着しましたが、これも狭隘な道となり、万が一、対向車が出てきた日には立ち往生となってしまうでしょう。カーナビは、堤防を走る「京都守口線」からのルートを指示するかもしれませんが、集落に下りる道は、ほとんど180度ターンのえげつないカーブなため、切り返しが何回も必要で、これまた大変な目に合いますので、このルートは避けてください。車で行かれる際は、集落内にコインパークがありますので、そこに停めるのがいいと思います。
この「常昌院」踏切は、京阪電車の「撮り鉄」ファンのスポットの一つのようですね。男山と川とに挟まれる「ベルト地帯」を京阪電車がやや蛇行しながら走り抜けるのを、ごく近くで撮ることができます。
ということで、四苦八苦して、ようやくのお参りです。
山門をくぐると、すぐ左手に、件の「日光椿」が見えてきます。植え込みの中に、ひときわ大きく立っているのですぐにわかります。
太い幹が立ち上がり、3メートルほどの高さから傘のように枝が分岐しています。特段の表示もなく、囲いもありませんので、木の肌に手を触れることができました。
400年の歴史の肌触りというものでしょうか。年数の割には、魁偉な木肌ではなく、滑らかで、斑もあまり入らず、武骨な感じはありません。周囲を測ってみると、1メートル40センチくらいあり、やはり立派な大木です。
本当は、花の盛りに訪れたかったのですが、何とか見に行くことができたのが4月。
もうシーズンは終わりで、枝の先の方に、いくらか花が残っていましたが、何とか、唐子の咲き姿を見ることはできました。お寺の倉庫の上方と、隣家の2階へと枝を伸ばしているので、隣の方のベランダからの眺めが一番見応えがあるでしょう。
無数の花が紅く彩る巨木として、地元で親しまれてきた椿ですが、樹齢を重ねて、枝が分岐するところが腐朽し、樹勢が弱ってきていると言われています。見上げても、その状況は分かりませんでしたが、3月には、往年のように、見事な花付きだったのでしょうか。
京都の「日光椿」の巨木は、後水尾天皇お手植えの木が伝わる「華開院」、これも後水尾天皇遺愛の木で、京都市天然記念物に指定されている「霊鑑寺」、衝立のような刈込が見事な「曇華院」、そして、この「常昌院」が有名です。
このうち、華開院と曇華院は非公開、霊鑑寺の椿は、残念ながら主木は枯れてしまっているので、常昌院の椿は、身近に見ることができる、京の「日光椿」の巨木として、貴重なものです。
「常昌院」は、八幡市の賑わいからは離れたところに、ひっそりとたたずむ寺院なので、ゆっくりと椿を堪能することができます。「日光椿」以外にも、いくつか椿が咲いています。