- 1 城南宮の歴史
- 鳥羽離宮跡配置図(2007.10.財団法人京都市埋蔵文化財研究所制作)
- 2 神苑で、秋咲きの椿を鑑賞
- 3 「初嵐」
- 4 「白侘助」
- 5 「菊冬至」
- 6 「久寿玉(くすだま)」
- 7 「東方朔(とうぼうさく)」
- 8 「華園(はなぞの)」
- 9 「月兎(つきうさぎ)」
- 10 「城南椿」
- 11 「離宮椿」
- 12 名残の紅葉を味わう
1 城南宮の歴史
12月10日土曜日、快晴の心地よい日となり、久しぶりに城南宮まで足を運ぶことにしました。
城南宮は、平安京に都が遷された際に、その南に国の安泰と都の守護を願って創建されたとされ、白河天皇が上皇となって院政を開始してからは、その拠点として造営された鳥羽離宮の鎮守社として栄えました。
鳥羽離宮は、14世紀頃まで院御所として使用され、約百八十町(180万平方メートル)という広大な敷地には、多くの御所と寺院が築かれ、それらの周囲には、池を中心とした大規模な庭園が造られたことが、発掘調査でも確認されています。
【参考】京都市埋蔵文化財研究所編「京都歴史散策マップ」14.鳥羽離宮跡コースhttps://www.kyoto-arc.or.jp/museum/map/14toba.pdf
離宮の御殿は、熊野詣の精進所や方違(かたたがえ)の宿所にも充てられ、上皇や貴族は方位の災厄から無事であるよう祈願された歴史があり、今でも、城南宮は、方除(ほうよけ)の大社として、工事や引越の無事、旅行や道中の安全、交通安全などの御利益があると、広く信仰されています。
私も、家のリフォームの時に、お参りと御札をいただいたことがありますね。
また、城南宮は、承久3年(1221年)には、後鳥羽上皇が城南寺の流鏑馬ぞろいと称して諸国の兵を募り、北面・西面の武士を始め、畿内、在京の武士1700余騎が参じた、「承久の乱」の発端の地であるとともに、時は下って、慶応4年(1868年)には、「鳥羽・伏見の戦い」の始まりの地ともなるなど、歴史の転換点となる戦いの舞台としても知られています。
城南宮一帯は平安時代、白河上皇が造営した鳥羽離宮の「馬場殿」で、馬上から矢を射る行事「流鏑馬」発祥の地とされています 。(「城南宮ホームページ」より)
神苑の「平安の庭」において、毎年4月29日に行われる、風流な和歌の催しである「曲水の宴」は、マスコミに取り上げられる定番の年中行事の一つです。
2 神苑で、秋咲きの椿を鑑賞
城南宮にお参りした後は、神苑巡りをしましょう。
「昭和の小堀遠州」と称された中根金作が作庭し、「春の山」、「平安の庭」、「室町の庭」、「桃山の庭」、更には城南離宮のたたずまいを表現した「城南離宮の庭」から構成され、各時代の日本庭園を楽しむことができます。苑内には源氏物語に登場するほとんどの植物が植栽されており、100種類もの四季折々の花を観賞できます。(「城南宮ホームページ」より引用)
「春の山」、「平安の庭」には、約50種300本の椿が植えられており、「古典椿の道」、「近代・現代椿の道」など7つの椿ゾーンに分けられています。
そのうち、「秋咲き椿の道」の椿は、もう咲いているはずなので、楽しみにしながら神苑を歩きました。
3 「初嵐」
関西の古品種。早咲きの代表の一つですね。お茶の炉開きの時分に咲き、重宝される花としてよく登場します。
神苑入口の近く、南側に沿って植えられています。
幹周り20センチを超え、樹高も4〜5メートルはありそうなものが数本あり、神苑に植えられた時期がそれなりに古いと思われます。
4 「白侘助」
何とも清らかで上品なたたずまいに魅了されます。ほんのり黄緑色の花底もよい色合いですね。ワビスケの系統で、花に香りがあるということですが、失念しておりまして、またの機会に試してみたいと思います。
修学院離宮にある林丘寺の古木が有名ですが、今はコロナで拝観休止ということで、残念です。
5 「菊冬至」
京都府立植物園の3月恒例のツバキ展の時期には、いつも「菊冬至」は咲き終わりだったので、咲いているのを見るのは初めてです。
花弁の重なりが、端正な千重咲の名品です。中心から外に向けて、紅に白が、柔らかく、優しく、混じり合っていく様子が優雅で、実に美しいですね。
思ったよりも、中輪で、さほど花が大きくないことも、好ましいと思いました。
名前のとおり、菊も終わり(閉じ)、冬至の頃に花を楽しめます。
名前の由来としては、もう一つ、水干・水干袴や鎧直垂・鎧直垂袴などの縫い合わせ箇所につけられる、菊花状にほぐした房状の飾りである「菊綴」と似ているからという説があります。確かに、造花のような整った花なので、お稚児さんの白い水干に映える紅い「菊綴」を連想すると、しっくりきます。
6 「久寿玉(くすだま)」
今回、一番、華やかで、存在感のあった椿です。
大輪で、花色、形とも、花ごとに異なるところも楽しめます。写真の花は、気品あるまるでバラのような花姿が抜群に目立っており、見惚れてしまいました。
この吹掛絞の絶妙な入り具合はどうでしょう。
関西では、「弓場絞(ゆばしぼり)」ともいい、宝塚市弓場垣内で生まれ、地名にちなんで名づけられた品種とされています。
7 「東方朔(とうぼうさく)」
早咲きの金沢の名花「西王母」から生まれた品種です。
東方朔は、漢の武帝に仕えた人物で、西王母の育てる、三千年に一度しか実のならない桃を食べて長寿を得たという伝説が残っています。西王母つながりの命名なのかな。
8 「華園(はなぞの)」
愛知県稲沢市にある椿専門の農園として有名な「椿園」さんの作出の品種です。「参平椿」の実生選抜種ということで、そう言われると、似ていますが、より華やかで、「桃地の紅絞り」が見事です。「参平椿」と同様、早咲きの性質ですね。
9 「月兎(つきうさぎ)」
これも、「椿園」さんの一品。絵日傘(えひがさ)と羽衣(はごろも)の交配種ということですが、この親から、こんな花が生まれるんですね。どちらも、雄蕊の弁化がないだけに、驚きです。
内側の波打つ花弁が、柔らかく、巻くように雄蕊を包み込んでいます。
ふんわりとした、愛らしい、小ぶりな椿です。花びらを重ねたお皿に盛ったクリームの洋菓子のように感じます。
純白で抱えるように咲き始めるこの花は、秋の夜空に輝く月のように「まんまる」な形が魅力の椿です。
そして、この花の特筆するべき部分は花粉となる雄蕊の一部が花弁となり、月の模様を想像させるような花姿に見えることです。
今までの椿に存在しない開花特性と花形、10月中~下旬頃より安定して咲き始め12月に一度目の見頃となる開花期など、見どころ満載の新花として2016年に発売しました。
「絵日傘・えひがさ」を親として、江戸椿を代表する花「羽衣・はごろも」を交配した独創的な美しい椿をお楽しみください。
椿園作出オリジナル品種です。(2016年12月24日発表)「椿園オンラインショップ」より
10 「城南椿」
「春の山」の苔むす丘には、自生の藪椿があり、「城南椿」と名付けられています。
根が自然のままに四方に這い、この一角は、深山に入ったかのような雰囲気があります。
2月下旬から3月上旬ころ、苔に落ちた紅い「落ち椿」と、隣接のしだれ梅とが、大層フォトジェニックな光景となるそうです。
その時分に再訪する予定です。
11 「離宮椿」
城南椿の最も古い木で、幹回り1.2メートル、斜めに傾ぎながら、高さ10メートルまで伸びる、樹齢300年といわれる、この神苑の顔でもある巨木です。
鳥羽離宮は、南北朝の動乱以降は、荒廃していきましたが、城南宮が、地元の社として、引き続き崇敬されてきたのと同様、この椿も、大事にされてきたのかもしれません。
12 名残の紅葉を味わう
室町・桃山の庭には、立派、かつ、手入れの行き届いた松に感嘆しました。
12月も半ばでしたが、まだ、紅葉の美しさが残っていました。
山柿が、晩秋の里山の鄙びたいい味を出しています。もうじき、冬ですね。