西大路一条にある「椿寺」
西大路通と、今出川通の一筋南の「一条通」との交差点の東南に、「五色八重散椿」で有名な、昆陽山地蔵院、通称「椿寺」があります。
椿のシーズンではありませんが、6月、新緑の「椿寺」を訪れました。
一条通を塀沿いに東に少し歩き、提灯がぶら下がる寺の門から中に入ると、すぐ、お目当ての椿が見えてきます。




二代目「五色八重散椿」
先代の椿は、加藤清正が文禄の役(1593年)に朝鮮から持ち帰り秀吉に献じたものと伝えられています。(のち、北野大茶会のとき、秀吉がこの寺を一荘としたゆかりで寄進されたものと言われています。)
現存していれば、樹齢500年を超える、花はもちろん、樹形も見事な、京都を代表する名椿だったのですが、惜しくも、昭和58年(1983年)に枯れてしまい、今は、二代目に代替わりしています。
先代を挿し木して育てた、後継の樹ですが、120年ほどの樹齢ということで、元気に枝葉を広げ、メインツリーとしての役目を果たしています。




先代が枯れた原因を、お寺の方にお聞きすると、市街化の中で、地下水の流れなどに影響があったのかもしれないということでした。先代は、西大路通沿いにあって、塀で隔てられているとはいえ、排気ガス等の影響もあっただろうし、西日を遮るものもなく、陽割れが進行していたのかもしれません。
500年近く生きただけでも、素晴らしいことですが、椿は長命なので、500年を超えても、まだまだ生き続けるものがあるだけに、今は見られないのは残念です。
先代の写真を見ると、深い皺の刻まれた、どっしりとした幹回りと四方に張り出す太い枝が、年代を重ねた風格を感じさせます。
(先代の椿・・・「季刊アニマ7椿 1976冬号」より)
山種美術館に所蔵される、速水御舟作の「椿図」(重要文化財)は、先代の椿を描いたものです。
著名な人物が様々な時代において、次々と関わることで、より一層の価値が付加されていったのだと思います。二代目も、年を経て、様々なエピソードを纏うことによって、段々と名椿にふさわしくなっていくのでしょう。
椿のお守り(500円)を買いましたが、なかなか可愛らしいです。五色椿らしく、3種類の色がありましたので、お好みのものをどうぞ。
また、あらためて、花の時期に訪れようと思っています。近接して植えられている桜の開花と、椿の咲く時期が合うときが、一番の見どきになるでしょう。