京都の大きな古本市といえば、5月の岡崎「みやこめっせ」での「春の古書大即売会」、8月の下鴨神社・糺の森での「下鴨納涼古本まつり」、そして11月の百万遍・知恩寺境内での「秋の古本まつり」が三大古本市として有名で、季節の風物詩ともなっています。
この下鴨と知恩寺の古本市は、京都ならではの場所で開催され、2024年で、下鴨は37回、知恩寺は48回と回が重ねられ、京都内外から多くの人が訪れ、親しまれています。
どちらも幾度となくのぞいていますが、夏の下鴨の古本市は、糺の森の緑陰と小川の流れで涼をとれるとはいえ、異常な暑さが続くここ数年、出ていく気力が失せています。
秋の古本まつりが季節的には一番よろしく、この11月3日、前日の大雨もあがった気持ちの良い晴天のもと出かけてきました。
1 知恩寺の「秋の古本まつり」
百万遍交差点を東に入ってすぐ、今出川通りに面する「総門」の向こう、御影堂に至る参道沿いのエリアに、所狭しと、テントと縁台が広がり、20万冊を超えるという古書が並べられています。見て回るだけで、あっという間に時間がたってしまいます。
私は、この市で、椿や寺社に関する本やSF本をよく買っているので、古書店の目星をつけながら、一渡り古本巡りをいたしました。
参道左手にある「阿弥陀堂」、右手にある「釈迦堂」の堂周りには、オークションにかけられる全集本が、紐で結わえられ、山積みされています。ごく当たり前のように、重要文化財指定建物の軒先を借りているのも、仏さまの広い御心なのか、寺社が身近な京都らしくていいですね。
境内の阿弥陀経石や、佇むお地蔵さん、お寺の植え込みに、古本と手に取る人々とが溶け込んで、不思議となじんでいる光景となっています。
今年はお目当ての本は、見つかりませんでしたが、岩波の日本古典文学大系の「宇治拾遺物語」と、「花の京都」という本を買って帰りました(いずれも200円!)
以前は、SF系も、SFマガジンや奇想天外、ハヤカワ・創元・サンリオ文庫、たまにSF全集もあって、掘り出し物もあったのですが、最近はとんと見かけなくなり、少し寂しいですね。
一通り古本を見て回った後、いつもどおり、御影堂にあがって、おまいりしました。いつ来ても、この大伽藍は、本当に大きいです。
極楽往生を願って、人々が連綿としてお参りした境内は、今も、この古本市や、毎月15日に開かれる「手づくり市」でにぎわっています。
昔と変わらず、御影堂から法然上人が慈悲深く見下ろしておられ、ありがたくもご縁を結ばせていただいているのかもしれません。
2 「勢至堂」そばの椿
古本市の雑踏から離れて、御影堂の右手にある勢至堂のそばにいくと、球状に仕立てられた一本の椿があります。幹径20センチくらいで、古木、巨木ではありませんが、周りに他の木がないので、元気に枝葉を茂らせています。
毎回立ち寄っているのですが、咲いている時期に行ったことがなくて、どんな花なのか未だに知りません。
知恩寺の左右に並ぶ塔頭の中にも、椿らしきものを見かけていますので、来春には寄ってみたいと思っていますが、行きたいところの積み残しが増える一方です。