
洛西ニュータウンの南西、西山を背景にして田園の広がる大原野の灰方町にある大歳神社は、718年の創建と伝えられる古社で、主祭神は、農耕と五穀豊穣の神である大歳大神、相殿には、石作大神、豊玉姫命を祀っています。石作大神という神様が地域色を出していますね。
この地に勢力を占めたと言われる豪族・石作氏の祖先を祀る神ですが、石作氏は、大原野に産出された石灰岩を利用して、石棺などの製作を行っていたと伝わります。
この地域一帯は、かつて石作郷と呼ばれ、今も石作町の名前が残っていますし、灰方や出灰(いずりは)など関連の地名も往時をしのばせます。

メジャーな大原野神社よりも創建が古い由緒ある社ですが、大原野の田園風景に溶け込んで、いかにも村の鎮守という昔ながらの雰囲気があり、お気に入りのスポットの一つです。
この神社の社域の外周部には、境界を示す標柱のように藪椿が立ち並んでいます。
中でも西側の椿の一群は、かなりの大木です。一番大きな樹は、明るい灰白色の双幹の椿で、それぞれ直径30センチ近くある幹が根元から分かれて高く立ち上がり、大きく樹形を広げています。


椿は1年で1ミリ太くなるといいますので、200~300年くらいの樹齢なのでしょうか。3月7日現在で、ほぼ満開。高木なので花が遠目に見えますが、外側の幹の大枝が、畦道へと低く張り出しているので、間近に満開の姿を見ることができました。

まさにスタンダードな藪椿で、やや小輪の花が一面に咲いています。畔から眺めると、無数の紅い椿の花が西日を受け、その合間に本殿が鎮座する様子が、どこかの田舎で見たような何とも懐かしい感じのする光景でした。

その椿の南側に立つ大きな2本の椿は、太さは及びませんが、大きめの、まるで黒椿のような黒紅色の花の色合いが実に魅力的でした。枝の奥、葉陰に顔を覗かせる、深みのある暗さを帯びる赤色の花には、神秘的な味わいさえありました。


神社の社叢は、古くは「栢の森」として、紀貫之にも詠まれた名所らしいのですが、現存する栢は数本だけで、あとは広場のように開けています。そんな場所に、このような椿の大木が何本も残っているのは不思議な感じもします。
どこにも言及されることもない椿ですが、地元の人たちに、当たり前のように親しまれ、切られることなく残されてきたのでしょう。

「影とのみ頼むかひありて露霜に色変わりせぬかへの杜」 紀貫之
現在の本殿は昭和16年に長岡天満宮より移築。1690年に建立されたもの。



